8/16 『脱銅箔、リチウムイオン電池セルを10%軽量化する新フィルム』

【鈴木の独り言】
『脱銅箔、リチウムイオン電池セルを10%軽量化する新フィルム』MONOist, 7/30, 2026
https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2607/30/news035.html

 リチウムイオン電池集電箔には正極はアルミ箔、負極は銅箔が使われる。この記事のポイントは3点。樹脂集電箔として正極用は以前より開発されていたが負極用は世界初であるという点。厚さを銅箔と同等の7μm程度に抑え重量を半分程度としている点。そして従来の樹脂フィルム系(PETやOPP)よりも性能向上させている点である。
 現在、銅の価格は上昇傾向であり、コスト増加要因となっているが、これ以上銅箔を薄くすると強度が低下し、プロセス内で使えなくなってしまう。一定レベルの膜強度を維持しながら銅の使用量を減らす方法として樹脂フィルム表面に銅を形成し、集電箔とする方法が検討されてきた。しかし、密着性が上がらず、強度面からもあまり薄くすることが出来ず、なかなか実用域の材料が出来てこなかった。
東レは樹脂材料から開発を行なったようで、これらの問題解決しつつ、実用に耐えるものを作り出したようだ。7μmの銅箔から表裏2μmだけに減らす事で、28.5%の銅の使用量で済む。4.5μm樹脂分の重量増加との差し引きで「50~60%の軽量化」という事だ。セル当り10%程度の軽量化と見積もられているが、これは少なくない数字だと思う。
 通販番組の様だが、気になるのはお値段だ。銅の使用量は1/4に減っているので、その分安価になると思いたい所だが、4.5μmの樹脂フィルムを作るのは非常に大変だろう。私もかなり昔に無理矢理3ミクロン程度の樹脂フィルムを作ってみたが、独立膜としてハンドリング出来ず、静電気で何処にでも張り付いてしまう様な物だった。因みに食品包装ラップは10μmである。あの薄いフィルムですら10μmあるのだ。4.5μmがいかに薄いかお分かり頂けるだろう。薄いと言う事は材料的には安価になる要因だが、製造、ハンドリングではコスト増加要因となる。
 銅の「形成」方法も気になる所だ。単純に箔を貼り付けるというのは1μmの銅箔をハンドリングするのも大変だろうと思われるし、接着方法も難しい。そこで良く使われるのは金属蒸着だが、本来はもっと薄い層(0.01μm~0.1μm)を形成する方式となる。1μm程度も可能ではあると言われるが、容易ではなさそうだ。これもコスト増加要因となる。因みに金箔は0.1μm程度である。あの取り扱いをイメージすると、薄い金属は非常に扱いにくいと分かる。
このような理由から今回話題のこの負極集電フィルムが量産で当たり前に使われる様になるかどうかは今後の製造方法開発とコストダウンに拠ると考えて居る。