7/25 『廃ペットボトルにたった2.5%の添加剤を足せば、バッテリー素材の重要鉱物に』

【鈴木の独り言】
『廃ペットボトルにたった2.5%の添加剤を足せば、バッテリー素材の重要鉱物に』GIZMODO, 7/18, 2026

https://article.auone.jp/detail/1/3/7/32_7_r_20260718_1784364221343179

 リチウムイオン電池の負極材と言えば99%近くが黒鉛(Graphite; グラファイト)によって作られている。LTOなども使われる事があるが、最近ではシリコン系などの添加物が使われたり、金属リチウムが使われたりする例も出てきた。それでも主力はグラファイトである状況は変わっていない。

 PETボトルはリサイクルの優等生と言われるが、その回収、再生にはコストがかかり、ボランティア、販売店、自治体が協力してなんとか回しているという状況だ。この記事のようにバッテリーの素材にすれば高い付加価値が生じ、経済原則だけで活用出来る様になるので面白い取り組みだと思う。

 PETのような樹脂は酸素を多く含むため、そのまま焼くとハードカーボン質になってしまうという傾向がある。そこで、グラフェンを「テンプレート(型)」として添加ししてやることでそのグラフェンの結晶に沿った形で炭素が並び、グラファイト化しやすくなるという話だ。

 材料としてはそれでOKだが、PETのアップサイクルとして考えた場合、コストが気になるところだ。元の論文と思われるものがこれだが、

Shakshi Sekar et. al. “Upcycling PET plastic waste: A graphenic additive templated approach to synthetic graphite” Diamond and Related Materials, Volume 164, April 2026, DOI: 10.1016/j.diamond.2026.113559

非常に重要な点が見当たらない。それは黒鉛化温度だ。一般に黒鉛化は2500℃~300℃である。その温度で数時間~数日かけて黒鉛化するのだが、基本的に電気を使ってその温度に上げるというプロセスを用いる。この温度が下げられれば大きなメリットだが、同じ温度と言う事であればコストダウンはかなり厳しい。樹脂としてのリサイクルを行なった方が経済的という話になる。

 また、グラフェンは非常に高価な材料だ。多層グラフェンでも数万円/kg程度は最低でもするだろう。5万円/kgだと仮定すると、1kgのPETの方はほぼゼロ円で入手出来るとして、PETを炭化するために2.5%のグラフェンを添加すると、それだけで1250円かかる。PETの炭化収率は15~20%程度と言われているが、つまりPET 1kgへ2.5%添加して製造(炭化、焼成)したグラファイトは200g程度に減ってしまうと言う事だ。

 一般的なグラファイト系正極は6~10ドル/kg程度(1000~1500円)で取引されていると思われる。収率を考えると、PETグラファイト1kgを得るためにはグラフェンが最低でも1250円×5=6250円 が必要だ。経済的には負極材料としてはグラフェンの価格だけでもほぼ使えないレベルだと分かる。PETは2500℃以上での焼成も必要なので、その電気代もコストに大きく乗ってくる。

 技術としては非常に面白いが、グラフェンがキロ当り1万円以下になってもこれは実用化出来るレベルの話では無さそうだ。