6/4 『2400回充放電でも劣化しにくい、旭化成の電解液が実現した高出力電池とは』
【鈴木の独り言】
『2400回充放電でも劣化しにくい、旭化成の電解液が実現した高出力電池とは』MONOist, 6/3, 2026
https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2606/03/news035.html
リチウムイオン電池の出力向上の技術としてはざっくり言って「抵抗を下げる」「反応を早くする」のいずれかという認識だ。抵抗はいわゆる電気抵抗を下げる事と、イオンの動きやすさを高くして抵抗を下げる事が大きな要因だろう。活物質内の拡散の速度を上げるのもこの抵抗を下げる為の方法の一つだと考える。一方で反応を早くするというのは、活物資へのイオンの挿入速度を上げることなどが大きな要因だと言われている。
この記事にある電解液は「アセトニトリル含有」とあるが、アセトニトリルはEC程ではないが極めて高い比誘電率(37.5/常温)を持っているため、LiPF6やLiFSIなどのリチウム塩を良く溶かす事が出来る。また、常温域の粘度が低く、これも抵抗を下げる事に大きく寄与しているのだろう。イオン伝導性も高く高出力電解液として期待されてきたものである。
一方でこれまで電解液として使われる事が少なかった理由は、アセトニトリルの還元耐性の低さ故だろう。ECや鎖状カーボネートに比べ、負極側で高い電位で還元反応を起こしてしまい、0.05V程度の電位になるグラファイト負極とは相性が悪い。低電位に長時間晒される環境下では電解液が連続的に劣化される。このためアセトニトリルは電解液として使用されることは殆ど無かった。
それではどうやってこの問題を解決してきたかと言うところが気になるが、その辺はしっかり調べていないので推定でしかないが、要するに負極表面へ適度な被膜を作る添加剤の技術と、出力性能が高く被膜生成効果も高いリチウム塩であるLiFSIの添加によるものと考えて居る。一般に添加剤の分解電位は、FEC>VC>LiFSI>アセトニトリル>EC> LiPF6>DECという順に高電位で還元反応するという
もう一つ論文などを見ると、アセトニトリル系電解液に高濃度にリチウム塩を溶解(溶媒和)し、フリーに動くアセトニトリル分子を殆どゼロにすることで、大幅に還元耐性を高くする「高濃度電解液」と呼ばれる方法が知られている。
今後、ニトリル系電解液によるリチウムイオン電池の低温特性、高出力特性が向上した電池の上市が増えてきそうだ。これをやることでリチウムイオン電池(特にLFP正極電池)の大きな弱点である低温特性をカバーし、ナトリウムイオン電池との競争力を維持する試みが増えてきそうだ。

