2/28 『海水を淡水化しながら多くのエネルギーを蓄えられる次世代ナトリウムイオン電池の開発にサリー大学が成功』
【鈴木の独り言】
『海水を淡水化しながら多くのエネルギーを蓄えられる次世代ナトリウムイオン電池の開発にサリー大学が成功』
ここに来てナトリウムイオン電池関連の話題がかなり多くなってきている。注目を集めているのは、その期待度の高さからだと思う。リチウムイオン電池の大きな問題点の一つに価格がある。やはり車載電池として1台当り数百万(100~300万円)というのは「それで自動車買えるじゃん」という意識がどうしても働いてしまうのだと思う。元素として6番目に多く存在するナトリウムに期待するのはそういう所だろう。
実際にリチウムイオン電池が高価なのはリチウム自体の希少性もあるが、それ以上に正極のコストが非常に高い事に起因している。電池材料に占める正極コストの割合は5割を超えており、それはニッケル、コバルトという材料を使い、高温で焼成するというプロセスのせいでもある。最近流行のLFP正極はこれらレアメタルを使わず、燐、鉄を使う事で原材料的には易く出来る材料である。しかし、ナトリウムイオン電池で高容量を出そうとするとニッケルやコバルトを使う「層状正極」を使うか、プルシアンブルー類似体と呼ばれる(鉄とシアンが主成分)合成が非常に大変な材料を使う事になるという状況で、容量を稼ぐのは非常に高いハードルとなっている。そんな背景でLFP電池対SiB(ナトリウムイオン電池)という感じになってきている。
さて、この記事のポイントはそのナトリウムイオン電池正極にバナジウム系の材料を使う事、加えてその構成の中に結晶水を残したまま使用する事で280 mA h/gという大きな容量を示したと言うブレークスルーが報告されている。
本来、リチウムイオン電池やナトリウムイオン電池の様に正極電位の高い電池では水分は電極で電気分解され、ガス発生の原因となり危険である。しかしこの結晶水として構造中に水を取り込んだ構成ではこのような電気分解が起こらないというのは驚きである。その水が結晶を安定化させているという事実は、今後の正極開発の大きな知見となりそうだ。
バナジウムという元素は身の回りであまり見かけない材料というのが正直なところだと思うが、実はバナジウムは、チタン、マンガンより少ないが、鉛、銅よりも多く存在する元素である。五酸化バナジウム(V2O5)の価格は約1700円/kgという価格である。最近ではレドックスフロー電池の活物質として注目されている。
この正極はこれまでの物に対して非常に期待感が持てる正極活物質だと感じる。その上で、この結晶水が全く安定化されていれば良いが、何らかの条件で結晶外に放出されて電気分解を起こすようなことがあれば、一気に劣化するのでは無いかと言う不安もある。また、この容量自は1/28Cという超低速充電時の値で1000 mA/g(約4C)という高速充電で70.9mAh/gという容量だったようで、通常の1C充電では150~170mAh/g程度(推定)になるのではと考えて居る。1C(出来れば3C)で層状正極程度の容量が出れば、この材料が主流になる可能性も出てくる。
この材料を使った海水淡水化+蓄電という効果については、これも面白い発想だがこれは別の機会に。


