5/8 『溶媒・バインダー不要の乾式電極でリチウム硫黄電池の量産化に道 韓国・高麗大学校』

【鈴木の独り言】
『溶媒・バインダー不要の乾式電極でリチウム硫黄電池の量産化に道 韓国・高麗大学校』Science Portal Korea
https://spap.jst.go.jp/korea/news/260502/topic_nk_01.html

 リチウム硫黄電池は次世代電池の本命と言われている電池である。なぜ本命なのかというと、その容量の大きさが理由だ。通常のリチウムイオン電池は250Wh/kg程度の容量密度がある。平均電圧を3.6Vとすると、約70Ah/kgとなる。リチウム硫黄電池は600~800Ah/kgの容量密度がある。これだけ見ると10倍近い容量があるように思われるが、電圧が2.0V前後で、リチウムイオン電池の5.5割と低い。結果、5~6倍の容量になる可能性がある。電池として重量が軽いため、対リチウムイオン電池で体積エネルギー密度の倍率はは少し下がるが、非常に大きな容量を持った電池であることは間違い無い。

 そのリチウム硫黄電池がなかなか実用化されていない大きな理由は、正極の硫黄がリチウムと結合するとポリサルファイドと呼ばれる物質を作るのだが、これが電解液に溶出してしまうという問題がある。その解決方法を長年模索しているがなかなか良い物が出てこなかったという理由による。正極の硫黄が溶出するとサイクル特性が悪化し、すぐに電池の寿命が来てしまうという問題がある。しかし、最近では正極材料の開発が進み。この溶出問題を抑える方法が幾つか見つかってきた事で、一気にサイクル性能の向上が可能になってきた。

 この様な背景からリチウム硫黄電池の開発ステージが一つ上がったと言えそうだ。この記事では硫黄の特性に注目し、加熱して軟化した硫黄を直接集電箔上に接着して電極とする方法で安価にリチウム硫黄電池の電極を作る事が出来たというものだ。面白い着眼点孔のだが、そもそもただの硫黄では上記のポリサルファイドの溶出問題が解決していない。加えて放電によって硫黄にリチウムが結合してくると活物質体積が大きくなり、充電時に小さくなることで電極の構造が大きく変わる。これも劣化の要因なので、このような挙動を抑えているのかよく分からない。むしろ溶出問題と電極構造劣化の問題の克服の方が非常に気になる所だが、記事には書かれていない。

 サイクル特性や充放電特性のデータが示されていないので、論文の方を確認すると、炭素(ケッチェンブラック)と硫黄の混合物を80℃でプレスし、その電池特性とサイクル特性を測定していた。500cycleで80~90%の保持率を持っているのでかなりよく出来た方法だと思われる。過去に多孔質炭素に硫黄を担持させてポリサルファイドを抑制するという方法が検討されているが多少の改善効果程度だったと記憶している。この論文との違いは恐らく炭素ホスト(兼導電助剤)としてケッチェンブラックを使用しているところではないかと思われる。

 この方法ではバインダーを使わず、塗工法ではなく、活物質そのものの粘着性を利用して電極を作成している点が非常に面白い。これならばかなり容易にラボレベルでは電池が作れそうだ。大面積化が可能になれば非常に面白いと考えて居る。